主著論文がGeophysical Research Lettersに掲載

和田を筆頭著者とする論文 “Meteorological Aspects of Gamma-ray Glows in Winter Thunderstorms” がアメリカ地球物理学連合の速報誌Geophysical Research Lettersに掲載されました。論文の本体はこちらから閲覧できます。

雷雲の中の静電場によって電子が加速されるgamma-ray glow (ロングバーストとも呼ぶ) は、雷雲中に極めて高い電場が存在している証拠です。その電場が雷雲中でどのように形成されるかは、高エネネルギー大気物理学における大問題の一つです。雷雲の中でどのようなことが起きているかを調べるためには、ガンマ線のみならず、様々な波長・手法で観測することが必要となります。

今回の論文では、まず金沢大学で観測された11事例のgamma-ray glowを解析しました。金沢大学角間キャンパスは我々が観測機器をおいているサイトの中で最もgamma-ray glowが多く観測されている場所です。その11事例について、国土交通省が運用するXバンド気象レーダーXRAINのデータを解析し、上空を通過した雷雲の性質を調べました。その結果、gamma-ray glow発生時には、検出器の上空に電波を強く反射するあられが存在していることがわかりました。また金沢大学角間キャンパスの屋上に設置された降水粒子判別器もあられが降ってきたことを示していました。このことから、gamma-ray glowを発生させるような強力な電場領域は、発達した雲の下層にあられが存在するような状況で生み出されることが明らかとなりました。

気象レーダーによる雷雲の観測はこれまでも行われてきましたが、gamma-ray glowを引き起こす雷雲のレーダー観測はこれまで限られた数の報告しかありませんでした。我々は冬季雷における地上定点観測という世界的にもこの分野をリードする観測結果と国土交通省の提供する気象レーダーの高品質なデータを組み合わせて、系統的な解析を初めて論文報告しました。

今後はXRAINの二重偏波を用いたレーダーによる粒子判別など、レーダーデータのより詳細な解析によって、さらに雷雲内の様子が明らかになるものと期待しています。