主著論文2本がJGR Atmospheres誌に掲載
和田を筆頭著者とする2本の論文
・Photonuclear Reactions in Lightning: 1. Verification and Modeling of Reaction and Propagation Processes
・Photonuclear Reactions in Lightning: 2. Comparison Between Observation and Simulation Model
がアメリカ地球物理学連合の専門誌 Journal of Geophysical Research: Atmospheres に掲載されました。2つの論文は和田の博士論文の一部を投稿論文として編集したもので、シリーズとして論文誌に連続掲載されました。
2017年に我々は雷放電と同期して中性子と陽電子を検出したことから、雷放電が地球ガンマ線フラッシュを引発生させ、光核反応を大気中で引き起こしたことを突き止めました (Enoto et al., Nature, 2017)。この成果によって雷放電による光核反応の仕組みは解明されたものの、一方で放出されたガンマ線や中性子、陽電子の量といった定量的な評価はなされていませんでした。まず1本目の論文では、地球ガンマ線フラッシュをモデル化し、大気中でのガンマ線の散乱、光核反応の発生、生成した中性子や陽電子が大気中で伝搬に、地上に届くまでの一連の過程を、Geant4によるモンテカルロ・シミュレーションでモデル化しました。2本目の論文では、1本目で得られたモデルに検出器応答を組み込み、実際の観測データとの比較を行いました。その結果、地球ガンマ線フラッシュ、中性子、陽電子の各成分の量がそれぞれモデルと一致し、定量的にも光核反応で説明可能であることを突き止めました。またこのときの地球ガンマ線フラッシュは、宇宙で観測されるものと同じ量のガンマ線を放出していることがわかりました。宇宙よりも気圧が高い地上付近では一般に電子が加速されにくいと考えられていますが、今回の結果は大気の濃密さに関係なく、電子が効率よく加速・増幅されるメカニズムを示唆しています。